『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』を読んだらラブホはモノが消えがちなことを思い出した!!!!!!
若い方が素晴らしいなんて錯覚じゃないか。ときどき思う。ティーンはヤバイ。目に写るものすべて敵。ドラグスレイブ撃ち放ったろか?殺意の波動を出しながら千里の道も一歩からやで!
ときどき思い出す。なんか、学生の頃ってヘンな風になっちゃう。同じ失敗はもうしないぞー!天空に誓って、誓った傍から木っ端みじんになって。傷だらけの天使!チックショー。振り向くなアムロ!
人は不思議だ。うっかり自分のキズを忘れる。
最近読んだ。桜庭一樹『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』。除骨から心臓をえぐり取って見せたような小説だった。
美人の転校生の海野藻屑(うみのもくず)。彼女は嘘をつく。バレバレの嘘をつく。私は人魚なんだよ?目の前から消えることができるよ?とか。それを聞く山田なぎさ。「はあ…?」と言った。
山田なぎさは兄に相談する。嘘をつくクラスメイト。そうか、それは砂糖菓子の弾丸だな。砂糖菓子の??そう、なぎさは実弾を必要としてる。それは世の中にコミットする、直線的な力、実体のある力だ。その子が撃ってるのは空想的弾丸だ。彼女はそうじゃない?
物語の中盤だった。海野藻屑は野球部の男子に殴られる。馬乗りになられて顔をボコボコ。壊れた人形のように四肢をだらりさせる。彼女は抵抗しない。
藻屑はこの波が終わるのを待っているらしい。抵抗して逃げるのではなく、花名島の気が済んで、自然に手を止める時を待っているのだ。暴力にいつか終わりがあることを藻屑は知っている。そして終わらなければ死ぬだけだと達観。―――いや、あきらめているんだ。
後半に明かされた。彼女は父親から暴力を受けていた。彼女は父親が好きだった。好きだった。そしてナタでバラバラにされた。サイコロリンにされて彼女。
暴力をする父親だよ。それは酷いよ。やめなよ。そんなお父さん好きなんておかしいよ。
一方、山田なぎさは考える。彼女がバレバレな嘘をついていたこと。皆を困らせていたこと。砂糖菓子の弾丸を撃っていたこと。田舎の中学卒業したら自分はさっさと自衛隊に入ると決めていたこと。家族の生活だけ考えてたこと。実弾を必要としていた自分こそ全てをあきらめていたことを。そして彼女こそ生き抜いていたことを。
結果的に海野藻屑は超究武神破斬された。殴られても父親。父親を選んだ彼女。父親が好きだった。それは間違っていたか。もちろん間違っていた。そう大人は言う。でもさ、違うンじゃねーの?彼女が最後まで信じていたもの。いや、信じたかったもの。それを否定してしまえば彼女を否定することになる。
「いいよ、ずっと待ってるから」
私はバラマイケルになった海野藻屑にできる最終回答はこれしかない。何を待っているか私も分からない。何のことを言ってるか私も分からない。彼女にあーしろとかこーしろとか。同情も違う。読み終わったときにそう思った。
ずっと待ってるからねと思った。ある日、ウンコをしながら気がついた。私はいつかの私にこれ言ってるんだ!でも一体いつの時代の自分に言ってるンだろう?すっかり思い出せない。思い出せないンじゃあ君は嘘つきだよね?でもゼッタイ私は私に言ってるンだもん!嘘じゃないもん。あっ。
人は自分のキズをウッカリ忘れる。皮膚が上から覆い隠す。隠したのか隠れたのかも分からなくなる。忘れる。いずれ忘れたことも忘れる。ンでもさ、頭で忘れるけど身体は覚えている。覚えていてくれる。だから私たちは忘れたっていいんだ。思いっきり忘れていいんだよ。身体はとっても頭が良い。